
指定工場と認証工場の違いは、保安基準適合証を出せるかどうかに集約されます。どちらも地方運輸局長の認証を受けた整備工場ですが、指定工場は自動車検査員を選任して工場内で検査でき、車検の流れが大きく変わります。保安基準適合証を出せるかで車検の流れが変わる仕組みを、道路運送車両法と国土交通省の説明、日整連の最新の事業場数で整理します。
指定工場と認証工場の公式説明
- 国土交通省|認証工場と指定工場の違い車検の受け方の違いと標識の様式
- 関東運輸局|認証工場と指定工場地方運輸局の案内
- 日整連|都道府県別認証、指定事業場数令和8年3月末の最新値
指定工場と認証工場の違い
車検の基礎知識として押さえておきたいのは、二つの工場の関係です。指定工場は、認証工場の中から条件を満たした事業場が指定される、という上下の関係にあります。指定を受けていない認証工場は整備まで、指定工場は整備に加えて検査まで行えます。
指定工場と認証工場の違いとは、自動車検査員による検査と保安基準適合証の交付ができるかどうかの違いです。認証工場は、特定整備を事業として行うために事業の種類と事業場ごとに地方運輸局長の認証を受けた工場です(道路運送車両法第78条)。指定工場は、その認証を受けた事業場のうち、設備と技術と管理組織が基準に合い、自動車の検査の設備を持ち、自動車検査員を選任していると認められたものを地方運輸局長が指定します(第94条の2)。国土交通省は、指定工場では車両の持込みを省略でき、認証工場では車検場に車両を持ち込んで検査を受けると説明しています。整備の腕前の差を示す区分とは別物で、検査をどこで行えるかの区分です。
| 項目 | 指定工場(民間車検場) | 認証工場 |
|---|---|---|
| 根拠条文 | 道路運送車両法第94条の2 | 道路運送車両法第78条 |
| 前提 | 認証を受けた事業場であること | 事業の種類と事業場ごとに認証を受ける |
| 自動車検査員 | 選任して点検と整備の検査をさせる | 選任は求められていない |
| 保安基準適合証 | 交付できる | 交付できない |
| 車検での車両 | 運輸支局等への持込みを省略できる | 車検場へ持ち込んで検査を受ける |
| 標識の様式 | 指定自動車整備事業規則第15条 第五号様式 | 施行規則第62条 第二十号様式 |
標識(看板)の様式は国土交通省のページに画像で掲載されています。地色や文字色を文字で定めた公式の記述は確認できなかったため、ここでは様式番号だけを示します。
指定工場が交付する保安基準適合証
道路運送車両法第94条の5第1項は、指定自動車整備事業者が自動車を点検して必要な整備をし、保安基準に適合する旨を自動車検査員が証明したときは、請求により保安基準適合証と保安基準適合標章を依頼者に交付しなければならない、と定めています。
保安基準適合証とは、指定工場の自動車検査員が「この車は保安基準に適合している」と証明する書面で、継続検査で提出すると現車の提示と適合の判定があったものとみなされます(道路運送車両法第94条の5第8項)。有効期間は検査をした日から15日間です(指定自動車整備事業規則第9条)。平成29年4月からは電子での取扱いが始まり、依頼者の承諾があれば記載事項を登録情報処理機関に電磁的に提供でき、提供した時点で交付したものとみなされます。保安基準適合標章を前面に表示していれば、車検証の有効期間が切れていても無車検運行の禁止の規定は適用されません。認証工場はこの書面を交付できないため、車検では国の検査を受けます。
限定保安基準適合証との違い
限定保安基準適合証は、継続検査などで不合格となって限定自動車検査証を受けた車について、記載された不適合部分を整備し、その部分の適合を自動車検査員が証明したときに交付されます(第94条の5の2)。こちらも交付するのは指定工場です。保安基準適合標章は交付されません。軽自動車検査協会の手数料は、限定保安基準適合証を提出する場合1,900円です。
自動車検査員と指定工場・認証工場の事業場数
指定工場の検査を担うのが自動車検査員です。指定の要件に自動車検査員の選任が入っているため、検査員がいなければ指定工場として車検の検査はできません。日整連が公表している最新の集計は次のとおりです。
| 区分 | 令和8年3月末(令和7年度) |
|---|---|
| 認証事業場 | 92,261 |
| 認定事業場 | 2,456 |
| 指定事業場 | 29,788 |
| 自動車検査員 | 100,187人 |
| 整備主任者 | 221,887人 |
令和8年3月末の指定事業場(指定工場)は全国で29,788か所で、日整連の集計では3年連続で減っています。推移は令和5年3月末30,147、令和6年3月末30,012、令和7年3月末29,870、令和8年3月末29,788です。同じ時点の認証事業場は92,261、自動車検査員は100,187人、整備主任者は221,887人でした。なお日整連の表には、認証事業場数に指定事業場が含まれるかどうかの注記がありません。このため「認証工場のうち何割が指定工場か」という割合は、公表値からは確定できません。数字を引用するときは、時点と出典を添えて区別して書くのが安全です。
指定工場と認証工場の車検の流れの違い
車検を依頼したお客様から見ると、どちらも工場に車を預けて受け取る点は同じです。違いは、工場に預けている間に車がどこへ動くかにあります。
| 手順 | 指定工場 | 認証工場 |
|---|---|---|
| 1 | 受入点検をして見積もりを出す | 受入点検をして見積もりを出す |
| 2 | 点検と整備をする | 点検と整備をする |
| 3 | 自動車検査員が完成検査をする | 検査場の予約を取る |
| 4 | 保安基準適合証を交付(電子提供)する | 運輸支局等の車検場へ持ち込む |
| 5 | 継続検査を申請する(OSSも可) | 検査コースで国の検査を受ける |
| 6 | 記録等事務代行で車検証のICタグを更新し、検査標章を印刷する | 合格後、窓口で車検証と検査標章を受け取る |
指定工場の継続検査は、工場の中で検査から車検証の更新まで終えられる流れです。令和5年1月に始まった記録等事務委託制度により、継続検査(指定整備)は電子車検証の券面記載事項が変わらないため、記録等事務代行者が国土交通省の記録事務代行アプリで車検証のICタグを書き換え、検査標章を市販のプリンタで印刷すれば手続が完結し、運輸支局等への出頭は要りません。一方の認証工場は、検査の予約を自社で取り、整備を終えた車を車検場の検査コースへ持ち込みます。検査コースはラウンド制で、予約枠の日時に合わせて整備の完了を間に合わせる段取りが要ります。この移動と予約の待ちが、二つの工場の車検の流れで一番大きく違うところです。
認証工場の予約の取り方は指定工場・認証工場の検査予約の実務、持込みの書類は車検予約・持込の必要書類で説明しています。
指定工場と継続検査OSSの関係
継続検査OSSは、指定工場が保安基準適合証を電子で提供し、継続検査の申請と税や手数料の納付をインターネットで済ませる仕組みです。国土交通省の「継続検査OSS導入の手引き」は、利用の条件として次の2つを挙げています。
- e-JIBAIなどを使って自賠責保険の契約情報を電子化し、登録情報処理機関に登録する
- 電子保安基準適合証サービスの利用登録をする
検査手数料も、出し方によって変わります。登録車の継続検査は、窓口で持ち込むと国600円と機構2,000円の計2,600円、保安基準適合証を窓口に提出すると国1,700円と機構400円の計2,100円です。OSSで保安基準適合証を提出する場合は1,850円です(普通、小型、軽とも)。
| 継続検査の出し方 | 登録車の手数料 | 軽自動車の手数料 |
|---|---|---|
| 持込(認証工場・ユーザー車検) | 2,600円 | 2,500円 |
| 保安基準適合証を窓口に提出(指定工場) | 2,100円 | 2,100円 |
| 保安基準適合証をOSSで提出(指定工場) | 1,850円 | 1,850円 |
いずれも2026年4月1日改定後の額です。軽自動車の額は技術情報管理手数料400円を含みます。
指定工場で継続検査OSSを始めるには、自賠責の電子化、電子保安基準適合証、入庫から申請までの管理を一続きにする必要があります。自社の体制に合う進め方を知りたい場合は、OSS対応システムの相談(無料)をご利用ください。
指定工場と認証工場の違いのまとめ
指定工場と認証工場の違いは、自動車検査員が工場内で検査し、保安基準適合証を交付できるかどうかです。認証工場は道路運送車両法第78条の認証を受けた整備工場で、車検では運輸支局等の車検場に車両を持ち込みます。指定工場は認証工場のうち、検査の設備と自動車検査員の選任などの要件を満たして第94条の2で指定された事業場で、民間車検場とも呼ばれます。保安基準適合証の有効期間は検査日から15日間で、継続検査OSSでは電子化が必須です。令和8年3月末の指定事業場は29,788か所、自動車検査員は100,187人で、指定事業場は3年連続で減っています。
指定工場と認証工場に関するよくある質問
出典
本文の制度と数値は、次の一次情報で確認しました(2026年10月4日確認)。
- 国土交通省|認証工場と指定工場の違い:https://www.mlit.go.jp/jidosha/ninshoutoshiteinochigai.html
- 関東運輸局|認証工場と指定工場:https://wwwtb.mlit.go.jp/kanto/jidou_gian/seibi/ninshou_sitei_koujou.html
- 日整連|都道府県別認証、指定事業場数:https://www.jaspa.or.jp/member/data/number.html
- 日整連|事業場数の推移:https://www.jaspa.or.jp/member/data/num_change.html
- e-Gov|道路運送車両法:https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC0000000185
- e-Gov|指定自動車整備事業規則:https://laws.e-gov.go.jp/law/337M50000800049
- 国土交通省|電子保安基準適合証に関する報道発表:https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha09_hh_000208.html
- 日整連|保適証サービス マニュアル:https://www.jaspa.or.jp/portals/pdf/u_manual5_ver1.6.pdf
- 国土交通省(北陸信越運輸局掲載)|継続検査OSS導入の手引き:https://wwwtb.mlit.go.jp/hokushin/nagano/pdf/2018osspanf.pdf
- 国土交通省|手数料改定の一覧:https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001986066.pdf
- 電子車検証特設サイト|記録事務代行サービス:https://www.denshishakensho-portal.mlit.go.jp/business/service/
整備工場・販売店の方へ
継続検査OSSの申請まで、1つのシステムで。
自賠責(e-JIBAI連動)の取得、保安基準適合証の作成・発行、OSS申請、整備記録簿の電子保存まで。顧客・車両管理や見積・契約書もまとめて扱える整備・車販システムをご案内しています。
あわせて読みたい












